【実話】ありがとう…。
「佐藤さーん、これ明日の転院の書類」

と言って、看護師が入って来た。


「あっ、はい」

と受け取り、写真を撮ろうとすると、看護師がまた、話し掛けてきた。


「二人は、一緒に住んでるの?」



「いや、住んでないけど…」



「そうなんだ。毎日来てるし、一緒に住んでるんだと思った」

とニコニコ話し、病室を出て行った。


それから、やっと二人で写真を撮った。


たかさん。私、嬉しかったんだよ。

一緒に写真撮ったの初めてだったし―。


「じゃあ、面会時間終わりだし、帰るね」



「下まで送る」


エレベーターに乗り、1階へ着く。


エレベーターを降りると、いきなり後から抱き締められる―‐。


「たかさん…?」



抱き締める力が強くなる。


「……今回、望の存在はかなり大きかった。大事だって…思った。ありがとな」


抱き締めていた腕の力が少し弱まり、たかさんの方を向くと―。


たかさんの目には、今にも零れ落ちそうな程の、涙が溜まっていた…。


今にも泣きそうなのを我慢し、笑顔で

「またね」


そしてたかさんも…。

「またな」


お互い手を振り歩き出す。


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