落日
「ダメよ。聡は私のかわいい燕だから。……ねぇ、依子さん。また誠司とヨリを戻そうなんて、バカなことは考えていないでしょうね?」
「……そんなこと……考えていません」
「そう。それならいいわ」
彼女は……。
私の心を奪っただけじゃなく、愛しい人まで連れて行ってしまった。
すべては、自分の会社のために。
月島家のために……――。
そのためなら、手段を選ばない。
仮にそれが、最愛の息子の元恋人であったとしても。
「もう下がっていいわ。仕事はちゃんとしてね」
「――はい」
聡に関わるものすべてに接すると、胸が苦しくなって涙が出そうになる。