落日


そこには『燕』が飛び立った理由が克明に記されていた。

『燕』を飛び立たせたのは、副社長であり、社長もそのことを後になって副社長から報告を受けたらしい。


あの日……。

誠司の退職届をめぐって、社長室で起きた一件。

その時に副社長が社長に言った、不可解な言葉。


『事が起きてからじゃ遅いんだよ。未然に防げたからいいものを……』


副社長が社長室に突然やって来たのは、あることを報告するためだった。


鳥篭に閉じ込められている燕が、

自由を求めて錯乱した、と――。


私が社長室にいたとき、聡は月島グループ本社の受付まで来ていた。

それに対応したのは、副社長だった。


< 196 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop