落日
そこには『燕』が飛び立った理由が克明に記されていた。
『燕』を飛び立たせたのは、副社長であり、社長もそのことを後になって副社長から報告を受けたらしい。
あの日……。
誠司の退職届をめぐって、社長室で起きた一件。
その時に副社長が社長に言った、不可解な言葉。
『事が起きてからじゃ遅いんだよ。未然に防げたからいいものを……』
副社長が社長室に突然やって来たのは、あることを報告するためだった。
鳥篭に閉じ込められている燕が、
自由を求めて錯乱した、と――。
私が社長室にいたとき、聡は月島グループ本社の受付まで来ていた。
それに対応したのは、副社長だった。