落日
そして、店内の隅々にまで目を配り、その姿を探す。
「あ………」
私の定まらない視線は、カフェの奥にある厨房の入り口でピタリと止まった。
そこにいたのは、カフェのシックな制服に身を包んだ、長身の男の人。
私の視線がそこに止まるのを待っていたのか。
彼は、私と目が合うなり、ニッと笑いながら手をひらひらと振っていた。
「……聡……っ?」
「ねぇ、だれ? 知り合い?」
ドゥオーモの頂上で、香織は聡の顔をはっきり見たわけではない。
さっきまで話していた当人が目の前にいるのに、香織は、しきりに首を傾げながら私に訊いてくる。