落日


香織たちとの行きつけのカフェ。

大学に入学して、親しくなった頃から通い続けていた。

もう三年以上ここを利用しているから、この店では常連客の部類に入っている。

いつも話に夢中になっていたから、ここの店員の顔なんて覚えてもいなかった。


これまでカフェに通っていた頃のことを、頭のなかで整理する。

そして、ホッと胸を撫で下ろす。


――私はここに、誠司と一緒に来たことがない。



「……あ、いくら?」


安堵して我に返った私は、冷静な口調で聡に尋ねる。


「いいよ。今日の分は、再会の記念ってことで。おごるよ」


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