落日


紙幣から少しだけ視線をずらすと、木目のキャビネットが見える。

その上段には、幸せそうに微笑んでいる私と誠司の写真が飾られていた。


写真と紙幣。私は視線を上下に動かしながら、両方を見比べる。

そして、静かに瞳を閉じて、自分に問いかける。



――いま、いちばん会いたいのは誰?

瞳を閉じた瞬間、真っ先に浮かんだのは、誰の顔?


『依子……――』



柔らかい笑顔で、私の名を呼ぶのは、誠司ではなく聡だった。



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