落日


冷めた視線でリビングをぐるりと見渡す聡。

その表情は、新たに見つけた聡の違う一面だった。

自慢するわけでも謙遜するわけでもない。ただ、冷め切った目で見つめている。

なんて悪趣味な部屋だ、という嫌悪感さえも感じた。


「コーヒーと紅茶、どっちがいい?」


訊かれて、私は少し迷ったあとに紅茶を頼んだ。

些細な飲み物の選択だけど、コーヒーを頼めば、きっと私は誠司のことを思い出してしまうに違いない。


聡が淹れてくれた紅茶をひとくち飲んだあと、私はふと、あることを思い出した。


「ねぇ、渡したいものがあるって言っていたけど……」

「あぁ、そうだった。ちょっと待ってて」


< 65 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop