落日
なかなか顔を上げようとしない私を、聡は下から覗きこんでくる。
間近に迫るのに、私はそれでも聡の顔を見ようとしない。いや、見ることができない。
意地でも目を合わせようとしない私と根競べでもするつもりなのか。
聡との顔の距離はますます近づいていく。
この近距離になってしまうと、どちらが顔を近づけているのか全く分からなくなる。
もしかしたら、私の方が聡に近づいていっているのかもしれない。
ゆっくりと近づいていく距離。
私は無心のまま、胸の鼓動だけを感じながら目をそっと閉じる。
やがて私の唇に落とされた温もりは、しだいに熱を帯びていく。
私は小さな抵抗も、理由を投げかけることもせず、ただ、聡に身を委ねた。