幻妖奇譚
 物凄い力で締め付けられる。薄れそうな意識の中、チエにこんな馬鹿力があるわけない……と、悟るヨシエ。

 教室の外にいる筈の先輩に助けを求めようと、すぐ近くにあった机を全体重を掛けて倒す。


 ガタンッ!!

 教室の外では、なかなか繋がらない携帯を持った先輩がアケミを介抱していた。突然の大きな音に、先輩の体が跳ねた。

「なに……? ヨシエ!?」

 慌てて教室に入る先輩。

「ヨシエ!? 何処なの!?」

 窓の側、今度は椅子を足で引っ掛け倒すヨシエ。

 先輩が音のした方向に目を凝らすと、うっすらと誰かに首を絞められ、もがくヨシエが見えた。

「だッ!? 誰? その手放しなさいッ!!」

 携帯のペンライト機能を使い、ヨシエ達に近付く先輩。

 一刻も早くヨシエを助けなきゃ!!……そうだ!

 携帯を開きカメラ機能を呼び出す。そして、ヨシエの首を絞めているチエの目に向けてシャッターボタンを押した。

『はいっチーズ♪ カシャ』

 なんとも気の抜ける音ではあるが、瞬間光ったフラッシュにより、相手が怯んだ隙にヨシエを助け出す事に成功した。



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