幻妖奇譚

∽沙希 3歳∽

 さきのママがいないの。

 きのうまでいたんだよ?

 おだいどころにたって、さきのだぁいすきなホットケーキやいてくれたよ。

 でもね……きのう、たくさんねて、きょうおきたらママがいなくなってるの。


 パパはさっきからいろんなひとにでんわしてる。

「パパ……。ママ、おでかけしたの?」

 パパがさきのあたまをやさしくなでる。


「そう……なんだよ。ママ、ちょっと遠くにお出掛けしててね、うん……。そこで迷子になったみたいなんだ」

「まいご? じゃあ、おねえさんにマイクで“およびだし”してもらわなくっちゃ」

 さきも、よく“まいご”になっちゃうから。
 でも、やさしいおねえさんが“およびだし”してくれるとね、すぐにママがきてくれるの。
 ……だけど、ママはうーんととおくまでおでかけしたから、ママにはきこえないんだって。

「……おなか、すいたなぁ」

 きゅるる、っておなかがないたおとをきいて、パパがパンをやいてくれた。

 つめたいミルクをのんでると、おうちのなかにおまわりさんがはいってきた。

 とってもこわいおかおのおじさんがふたり……。

 パパとおはなししてる……。

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