幻妖奇譚
「やったぁ! さき、パパにおしえてくる!」


 パパはまだむずかしそうなおかおをしてる。

「パパ! パパ、さきね、いもうとできたよ!」

 おじさんたちがへんなおかおをしてる。

「妹……? お子さんは確か1人では?」

「ええ、はい。沙希……この子1人です。沙希? 妹って誰だい?」

 パパがおひざをついて、さきをみる。

「あのね! かがみのなか! さき、おねえちゃんだよ!」


 さっきまでとちがって、やさしくわらうパパ。

「そ、か。沙希、おねえちゃんになったか……。良かったな」

「可愛らしい娘さんですね。では、私共はそろそろ……」

「あ、はい。すみませんがよろしくお願い致します」

「おじちゃんたち、ばいばーい」

 パパにはやくおしえなきゃ!いそいで、パパのてをひいて、かがみのまえにつれてくる。

 だけど、かがみにうつってるのは、ふしぎがおのさきと、くすくすわらうパパのおかお。

「いたんだよ! さっきまで、さきとおしゃべりしてたの!」


 パパはわらいながら、うんうん、っていってる。

 ……ほんとにいたのになぁ。


 ママはずっとおうちにかえってこなかった。そのかわり、おばあちゃんがおうちにきて、きゅうにさきをぎゅーっ、てだきしめた。

 おばあちゃんのにおいは、ママとはちがう。

 ママのつくるごはんとはちがうごはん……。


 なんでママ、かえってこないのかな?おうち、わすれちゃったのかな?

 ママ……。




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