幻妖奇譚
「だあれ?」


 ききかえしてみたけど、だれもいないみたい。へんなの?


 こんどはママのまねでくちべにをつけようと、かがみにちかづいた。

 かがみってふしぎだなぁ……。さきがふたりいるみたい。







「沙希」


 こんどははっきりきこえた。でも、パパはまだおはなしちゅう。

「だあれ? さきのことよんだ?」


「沙希、ここよ」


 おへやじゅう、みわたしてみるけど、だれもいない。

「鏡を見て」

「かがみ?」


 くるっ、とかがみにむかってじーっとみる。

 さっきとおなじで、さきがうつっているだけ。








「くすくす」


 あれ?さき、わらってないよ?だけど、かがみにうつってるさきはわらってる――。


「あなた、だあれ?」

「あたし? あたしは鏡の中の沙希よ」


「かがみのなかのさき?」

「そう。髪型もお洋服も一緒でしょ?」

 かがみをうえからしたまでみる。

「ほんとだ! さきとおんなじ! ふたごみたい」

「双子?」

「あのねあのね! さき、ふたごになりたかったの! ふたごだったらふたりであそべるでしょ?」

「そうだね。あたしたち、双子だね」

「ねぇ、おねえちゃん? いもうと? さき、おねえちゃんになりたい!」

「うん。いいよ。じゃあ、あたしが妹ね」




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