幻妖奇譚
「おい? どうし……うわっ!?」

 事故調査に来た警官も同じく顔を背ける。

 一体、どんな姿になっているのだろう?あたしはサキに近くへ行けるように頼んだ。

 折れ曲がったトラックのサイドミラー。

 警察や救急隊員が集まっている。

「即死……だな」

「まだ子供じゃないか……可哀相に」

 さっきまで、サキに首を締められていた光江。

 どれほどの衝撃だったのだろう?

 手足は曲がり白い骨が見えており、内蔵らしきモノが辺りに飛び散っている……!!

 そして何より……

 光江の首から上が……引き千切れていた。

 しかし肝心の頭がない――?

 鑑識の検分では、トラックに衝突され、被害者が持っていた受話器が偶然にもトラックのサイドミラーに絡みコードが引っ張られた事により首が断裂し、電話ボックスのガラスを突き破り、首だけがどこかへ飛んで行ったのでは……という事だった。





「サキ……光江の首どこ行ったのかな?」

「そうね……もしかしたら野良犬にでも持ち去られたのかもしれないわね」

「ふぅん……まぁいっか」

 最後は事故だったけど……あたしの望み通り悲惨で残酷な死に方だった。

「沙希……」

「……サキ。帰ろう? あたし観たいテレビがあるの思い出しちゃった」

 これだけ凄惨な場面を見たのに……沙希、あなたって……。

「流石は……の見込んだ通りだわ」

「サキッ!! 早く! 始まっちゃう~!!」





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