プレゼント(Intron crack企画)
少女が箱に頬を押し付ける。

「いえ……実は僕のコレもクリスマスが誕生日でして」

俺は無理に笑顔を浮かべ右手の小指を突き出した。

下品な仕草に母親が眉をひそめる。

突き出した小指が寒さで震えた。

かなり前から感覚がない。


小指と母親、その延長線上に小柄な影が見えた。


「でも……それじゃあ、このケーキあなた必要なんでしょ?」

影がピクッと動く。

雪のように真っ白いコートがすっかり暗くなった駅前に映える。

俺は視線を母親に合わせたまま、肩をすくめた。


「ここだけの話、実はさっきフラれましてね」




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