鈴が鳴る~イブの贈り物~
ひとりっきりのイブ
 二十一時、ネオンに照らされた街にはジングルベルのメロディが流れていた。

「おー、さむさむ」

 さとるは手を擦り合わせながら、家路を急いでいた。

 口から吐かれる息が、真っ白にかすんでいく。

 昨晩から降り始めた雪が、歩道を真っ白に染め上げていた。

 さとるの前を、サンタクロースの格好をした男が歩いていく。

 ケーキ屋の宣伝が書かれた看板を持った姿は気だるげだ。腕組みしたカップルが続く。

 次の日は土曜日。

 寒さのせいだけではない赤ら顔のサラリーマンが、仲間と肩を組み合い、大笑いしながらふらついている。

 その中の一人が、凍った地面に足を滑らせ盛大に尻餅をついた。

 一層、笑い声が大きくなった。



< 1 / 26 >

この作品をシェア

pagetop