鈴が鳴る~イブの贈り物~
「どんくせぇなぁ」 

 さとるは小さくあざけて笑い、尻餅をついたサラリーマンから視線を逸らし、正面を見た。

目の前には、ヴィトンのバックを肩から垂らした小柄な女性が歩いている。

その女性が足を滑らせよろめき、甲高い声を上げた。

転びはしない。何事も無かったように、再び歩きはじめる。

さとるは、もし転んでいたら自分は助けるだろうかと思った。

答えはすぐに出た。

助けず、無視して横を通り過ぎるだろう。

人助けとはいえ、下手に手を出したら、痴漢呼ばわりされるご時世だ。

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