鈴が鳴る~イブの贈り物~
 さとるはある事に気づいた。

 自分はいつから、サンタクロースを信じなくなったのだろう。

 幼稚園の頃は信じていた。

 クリスマスの日、朝、枕元に欲しかったゲーム機が置かれていたこともある。

 親が置いた物だが、サンタが来たと信じ、うさぎのように飛び跳ねたものだ。

 さとるは心の中に、大きな穴がぽっかりと空いているように思えた。
 
 ショーウインドウに映る自分の顔に、指を這わせる。

 眼鏡の奥にある目が、真っ黒に見えた。

 いつからこんな目になったのか分からなかった。

 確かに落ち込んでいるのに、感情が読み取れず、ただの仮面に見えた。

 さとるは無理矢理、微笑を浮かべた。

 笑っているようには見えない。

 さとるはショーウインドウから指を離し、ため息を吐いた。

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