鈴が鳴る~イブの贈り物~
変身
 ジングルベルの中、さとるは、香奈子との最後の日々を思い出しながら空を見上げた。

 雲で隠れて、星など見えないが、残念な気持ちなど起こらなかった。

 今、どんなに美しい星空を見た所で、気分が変わるとも思えない。

 少し格好つけたくなっただけだ。

 さとるは視線を落とし、再びクリスマスツリーに顔を向けた。

 今度はクリスマスツリーではなく、ショーウインドウの中のぬいぐるみに意識が向いた。

 サンタクロースとトナカイだ。

 サンタは手を上げ、さとるの方を見て笑っている。

 トナカイも赤い口を開けて笑っている。


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