鈴が鳴る～イブの贈り物～

ラストクリスマス

　さとるは玩具屋で扮装セットを買い、サンタに変身した。

　そしてトナカイのぬいぐるみを胸に抱き締め、街灯に照らされた白い雪の中、じゅっじゅっしゅっと小気味良い音を響かせながら、香奈子のマンションに向かって早足で歩いた。

　日常なら、不審者と思われるかもしれない。

　しかし、例え日常でも今のさとるには関係なかった。

　香奈子がどんな顔をして自分を出迎えるだろうという気持ちばかりが頭にあって、自然と笑ってしまう。

　途中、さとるの姿を見て振り返る人も居るが、クリスマスなので、皆、好意的な笑顔を浮かべている。

　パーティ帰りか、父親が子供のためにサンタになっていると思ったのだろう。