鈴が鳴る~イブの贈り物~
「お先にどうぞ」

 男が開閉ボタンを押しながら言った。

「ありがとうございます」

 さとるは先にエレベータから降り、香奈子の部屋とは逆に歩き、途中で止まって振り返った。

 視線の先に、男と香奈子の姿があった。

 香奈子は子供みたいに、無邪気な笑い声を出している。

 さとるは胸に抱えたトナカイのぬいぐるみを握り締めて唇を噛んだ。

「お似合いだ」

 二人の間に、自分が入れそうな隙間など見つからなかった。

 目が熱くなり、視界が揺らめいていく。

 トナカイを抱えているので、頬を伝う涙を拭う事も出来ない。

 さとるを残し、男と香奈子は部屋の扉を開いて入った。

 扉の閉まる無機質な音が廊下に響いた。
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