鈴が鳴る~イブの贈り物~
 風が吹いた。

 さとるは体を震わせ、通勤カバンを持ち直しコートのえりを閉めた。

 クリスマスイブなど関係なく、さとるの心は凍りそうだったが、夜は長い。

 まだまだこれから寒くなるだろう。

 香奈子が居た時は、寒さも我慢できた。

 恋人の温もりの中へ身を浸せば良かったが、今、帰ろうとしている部屋には温もりなど少しも無い。

 さとるは頭を振り、周囲に意識を向けて気持ちを紛らわせようとした。
 
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