Dear My Snow -過去編-【短編】
ぎゅっと抱きしめられて、耳元で囁かれる。
『ごめん、ゆき』
名前とともに囁かれたのは謝罪ではなく、愛の言葉。
「好きだ、ゆき」
抱きしめられた腕の暖かさと、はじめて聞く熱の籠った彼の声に胸が熱くなるのを感じる。
『ごめん、』
それでも、未だ頭から離れない謝罪の言葉は私を捕らえたままで。
『あいしてる、ゆき』
あの人の声も、言葉も私を縛り続けたままだけど、
「好きだ、ゆき」
私を温めるように腕に閉じ込めて、愛を囁き続けるこの人に、今は溶かされていたい。
泣きそうなくらいに私を求める声に答えたくて、彼の広い背中にそっと腕をまわす。
「ゆき…っ」
抱きしめる強い力が、声が嬉しくて、こらえていた涙が零れた。
――まだ、忘れられないの。
まだ、好きなの。
ねぇ、がんばるから。
この痛みが思い出に変わるまで
もう少し、
もう少しだけ、時間をください――……
