うさぴょん号発進せよ
船の置いてあるビルの屋上の扉を開けると、そこには既に先客がいた。

「あれっ、ミレイユ。こんなところで、どうしたの?」

「トヲルこそ」

普段はツインテールにしている髪も今は下ろし、パジャマを着ていた。ミレイユの髪は背中の中心まであり、トヲルが思っていたよりも長かった。

トヲルが側へ近付くと、

「もしかしてトヲル、眠れないの?」

心配そうにミレイユが、トヲルの顔を覗き込んだ。

「うん、まあ…。あ、じゃあミレイユも、同じ?」

「あたしは…」

そう言いながら視線をずらして、ミレイユは下を向いた。

「あ!『ソウ太くん』て、まだ働いているんだね」

「え?」

金網越しに指を差した方向を見てみると、真下にある街灯の明かりの中で『ソウ太くん』が忙しそうに動いているのが、小さく見える。
< 137 / 352 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop