うさぴょん号発進せよ
「いや、別に。何もないけど」

コウヅキが意外にあっさり言い放ったため、逆にトヲルの方が狼狽えてしまっていた。

「は?何も、って。だってこのヒト…」

「ああコイツ、な」

コウヅキは、まだ倒れて気絶しているブリリット星人を一瞥すると、

「コイツは、ゴードングループ所有の土地に、無断で入り込んだんだ。で、俺はソイツを捕まえるように、上から命令された、ってワケ。
あとはコイツを逃げないようにして、処理班に引き渡せば、この仕事はこれで終わりだ」

「?…あの、それってどういう…」

「さぁさぁ、そんなことより、退いた退いた」

トヲルの言葉を途中で遮ると、コウヅキはブリリット星人の近くに腰を下ろした。

仰向けだったブリリット星人を引っ繰り返してうつ伏せにすると、ホルスターを装着している場所とは反対側の腰にぶら下がっていた、小さなキーホルダーのようなものを2つ取り出す。

それを掌で握ると、微かに「カチリ」と音がした。

するとそれまでは、手中にすっぽりと収まるくらいの小さな物だったのが、コブシ大にまで大きくなった。

それは2つ穴のあるリングで、ブリリット星人の両手両足に、一つずつ嵌め込まれた。

トヲルは、それが合法的にも認められている『簡易手錠』だと気付いた。
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