恋 時 計 ~彼はおまわりさん~


「お、おまわりさん……?」


無言で私の前に立ったおまわりさんは、赤くなっている顔を私に寄せた。


そして優しいキスを唇に落とし、囁くように口を開いた。



「おやすみ」





私の胸の中はドキドキでいっぱいになり、すぐには声を出せなかった。




「おやすみなさい」


そう言えたのは、おまわりさんが部屋に入った後……。






おはよう

こんにちは

さようなら

ありがとう


私たちの世界にはいろんな挨拶がある。



だけど、こんなふうに胸をキュンっとさせる挨拶は初めてだった。






『おやすみ』


なんて素敵な響きだろう。

なんて綺麗な言葉だろう。




その日の夜、私はなかなか眠りにつくことが出来なかった。



隣の部屋にいる

おまわりさんを想って……。









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