恋 時 計 ~彼はおまわりさん~



テーブルの下で手を握り締めた私に、一哉が口を開いた。



「苦しい……それに悔しいよな……。組織が捕まらない限り、美樹の恐怖や不安は消えないよな……」

「一哉……」



悲しい瞳で私を見つめる一哉の言葉に、涙腺が緩んだ。


自分のことのように、一哉は私の気持ちをわかってくれてる。



「警察学校の噂は、信頼性があるのか?」

「わからないの……。智子の話では、一部の噂らしい」

「そうか……。じゃあ、なんとも言えないな……」



テーブルの上の一点を見つめて考え込む一哉。

私はすがる思いで、その姿を見ていた。



コーヒーが冷めてしまった頃、一哉は視線を私に移し重い口を開けた。


「今は、お父さんの仲間たちを信じるしかないんじゃないかな。
お父さんが信頼して一緒に働いてる仲間だ、きっと犯人を見つけてくれるよ」


「うん……」



一哉の言葉のとおり。



そうすることしか出来ないって

本当はわかってた。






< 541 / 712 >

この作品をシェア

pagetop