恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
少し緊張した気持ちで、お父さんの病室のドアをノックした。
今では通い慣れたお父さんの病院。
先週から四人部屋になり、同室の人たちはみんな気さくに話しかけてくれる人ばかり。
「おっ、青木さん、美樹ちゃんが来たよ」
入口に近いベッドを使用している田辺さんというおじさんが笑顔で言ってくれた。
「田辺さん、おはようございます」
挨拶をした私は、他の同室の人たちにも小さく会釈した。
窓際のベッドに居るお父さんとおばあちゃんに目を向ける。
お母さんが居ないことに気づいた私は、ほんの一瞬緊張の糸が緩んだ。
「おはよう。お母さんは?」
「今お花の水を替えにに行ってるよ」
おばあちゃんの言葉で、すぐに緊張感が戻った。
お母さんが戻ったら、きっと聞かれる。
昨日の夜、どこに居たのか……。