恋 時 計 ~彼はおまわりさん~



逃げるようにトイレに入ろうとした私に、お母さんがさり気なく口を開いた。


「今度からは連絡頂戴」



私は一瞬無動になった後、お母さんに顔を向けた。


するとお母さんは、「心配するんだから」と小さく口を動かした。




「ごめんね、お母さん……」


顔に熱を帯びた私は、きっとお母さんと初めてブラジャーを買いに行った時のように赤い顔をしてると思う。


お母さんはそんな私を見て、鼻に皺を寄せて小さく微笑んだ。




母と娘って不思議な関係。

初めてそう思った。


子どもだけど、どこかで女性として見てくれてる。

子どもだけど、時々大人として扱ってくれる。



騒がしかった心臓は、いつの間にか新鮮な鼓動へと変わっていた。





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