恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
それからしばらく車を走らせて、来たことのない山の中へと入っていった。
そのずっと奥に、大きな岩場と古びた倉庫がいくつかあった。
「あそこだ」
木の茂みに車を止めた浅野さんが、小さく呟いた。
あの倉庫の中に、おまわりさんがいる。
おまわりさんと犯人が……。
「何があっても、絶対に俺から離れるんじゃないぞ」
「はい」
私は浅野さんの言葉に深く頷き、車から降りた。
心臓が激しく動き、上手く呼吸が出来ない。
鳥の囀りや風の音でさえ、恐怖心を煽る。
震える足を、必死に前に出していたその時
今まで聞いたことのない大きな音が鼓膜に響いた。