恋 時 計 ~彼はおまわりさん~



ぼやけた視界の中で、部屋を出て行くお父さんの背中が見えた。


小さい頃から厳しいお父さん。

警察官で家にいる時はいつも新聞かニュースを見ていた。


家族の思い出はあるけど、お父さんとの思い出はほとんどない。



お花見シーズンやゴールデンウィーク、

クリスマスや年末……


家族の一大行事の時は、いつも仕事でいないから。



最近口うるさくなくなったと思ってたのに……。


大きな溜息の後、お父さんが開けたカーテンの奥でずっと隠れていた窓を開けた。



開いたと同時に、数日ぶりに外の風が私の鼻を擦り、春の香りを感じる。


目を閉じて胸一杯に空気を吸い込み瞼を開いた私は、

目の前に咲いてる満開の桜に驚いた。





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