伝えたいんだ
「あ、じゃあ俺行くわ。またなっ!」
大事な時間が、終わる。
傷は痛いけど、
傍にいられたこの瞬間は、幸せだった。
少しずつ遠ざかる背中。
体がもう、
車の中に入ってしまう。
だから一度。
もう一度だけ、
私にチャンスを下さい。
ダメでも、ちゃんと、
吹っ切れるから…。
「………っ笙ちゃん!」
「え?」
気付いた笙ちゃんが、車の窓を開けてこっちを向いた。
「なんだよ結花。どした?」
「―――――きっ」
「は?」
「笙ちゃん、すきっ」
「え……」
戸惑う笙ちゃん。
そうだよね、私、泣きそうだもん。
戸惑うよね。
困っちゃうよね。
でも、
好きって気持ちは、伝えたかったの。
最後、だから。
最後に、するから。