伝えたいんだ



「あ、じゃあ俺行くわ。またなっ!」



大事な時間が、終わる。



傷は痛いけど、
傍にいられたこの瞬間は、幸せだった。





少しずつ遠ざかる背中。


体がもう、
車の中に入ってしまう。





だから一度。

もう一度だけ、


私にチャンスを下さい。





ダメでも、ちゃんと、
吹っ切れるから…。





「………っ笙ちゃん!」



「え?」



気付いた笙ちゃんが、車の窓を開けてこっちを向いた。



「なんだよ結花。どした?」

「―――――きっ」

「は?」


「笙ちゃん、すきっ」


「え……」



戸惑う笙ちゃん。


そうだよね、私、泣きそうだもん。


戸惑うよね。


困っちゃうよね。




でも、




好きって気持ちは、伝えたかったの。




最後、だから。





最後に、するから。






< 6 / 22 >

この作品をシェア

pagetop