伝えたいんだ




「あれ、結花?」


「………っ笙、ちゃん」



幼馴染みだから家は近所で。




―――忘れてた


笙ちゃんはいつも、この時間に家を出て会社に行くこと。


「偶然だねっ」


努めて明るく笑う私は、なんて滑稽なんだろう。

気持ちはズキズキと、

――痛いのに。





「そんなキャリーバックなんて持ってどうしたんだよ。これから彼氏んとこで泊まりか?ははっ」




ぐさり。



ズキズキと痛む胸に、
再び笙ちゃんの言葉が、矢となって刺さる。



「、っ、そーなの。」



ねぇ、これ以上傷を抉らないでよ。

これ以上、傷つけないでよ。

笙ちゃんの言葉は、
今の私にはとても痛いよ。




「――マジかよ!くっそー俺なんて今から仕事だっつーのに羨ましいなお前っ」






笙ちゃん





笙ちゃん、






気付いてよ。







私はずっとあなただけだった。



笙ちゃんしか好きになれなかった。




気付いてよ。


私は、


笙ちゃんが、


好きなんだよ…?
< 5 / 22 >

この作品をシェア

pagetop