今宵、月の照らす街で
対策室では、政界との交渉がまだ続いている。


非常事態に対して、多少楽観的な考えから発言する内閣府。


対して、現役の退魔師・多香子と廉明、その仕事の重さを知る宮内庁長官と國井総理。


二つの構図を作りながら話が右往左往してしまう。


楽観的になるのは、退魔師の任務を経験したことが無いから。


生死の境で闘うなんて、温室育ちの老人が経験するはずもない。


多香子は溜息をついた。


「室長!新しい特異点を確認しました!」


話の進展を願う中、室長室にあずさが駆け込んだ。


声は回線をつなぐ先に届いたのだろう、老人達がざわつく。


「場所は?」


「はい、場所は神田と…」


対策室情報部からのアラームが鳴り、それを確かめたあずさが声を詰まらせた。


「か…霞ヶ関…政都宮内庁庁舎…ココです!!!」



その報告と共に、庁舎が低い音を響かせる。


同時に爆音と警報機が、けたたましい音を鳴らした。
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