今宵、月の照らす街で

有楽町マリオンビル屋上

空は紺色に染まり、月が空に輝く。都会の明かりに遮られ、星々は夜空を照らすことはない。


空に近く、地上から高い、有楽町マリオンビル屋上に、3人の人影が見えた。


「紘子さん、大丈夫ですか?」


剣一郎は背に抱えた紘子を優しく降ろした。


「ええ…ありがとう」


「剣、あれ…」


直仁が指差した先に、黒ずんだ柱が天に伸びて行くのが見えた。


「何だ、あれ…!」


その柱は遥か天空へと姿を登り続け、やがて線を細くして消えた。


一部始終を見ていると、耳に無線が届く。


「どうしたの?」


唯一、病室から避難した紘子はトランシーバーを付けてなかったため、状況が把握出来ない。


その紘子に、直仁が説明した。


「九段下駅に展開していた部隊が全滅しました…おそらく今の柱は…」


「陰の仕業なの?」


「そーだよ」


3人が聞き覚えの無い声に振り向いた。
< 165 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop