今宵、月の照らす街で
「…なっ!!?」


直仁本人も、何が起こったのか理解するまで暫く時間を要した。


そして自覚すると同時に、右肩からおびただしい血と、想像を超えた痛みが押し寄せてきた。


「アアアアア…ッ!!!?」


「直仁っ!!?」


うずくまる直仁に紘子が駆け寄る。


「ごめんね。邪魔するヤツは消していいって言われてるんだ」


アルファは直仁の切断された右腕を拾いあげ、ブラブラと遊ばせた。


「おい…その腕はオモチャじゃねぇぞ」


剣一郎の波動が更に膨れ上がる。


その波動がすべて、剣一郎の持つ刀に集束した。


「…君は強そうだね」


剣一郎の姿に興味を持ち、アルファは直仁の右腕を紘子の方に投げた。


今から急いで梔杏里の所へと直仁を連れて行けば、完全に治せるかもしれない。


だが、まだ傷の癒えない紘子が動くのは無理だ。


―――さっさと終わらせないと…!


「楽しませてくれるのかな?名前も知らない君は」


アルファは両腕を広げた。その手には背中の波動が宿る。


剣一郎は刀を構え、走り出した。


「蛍家第109代当主…蛍剣一郎だ!」
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