今宵、月の照らす街で
「本当に兄さんなら、私を倒せない。だってそうでしょう?兄さんは、私に武術で勝ったことは無いもの」


明奈が扇を開く。明人はゆっくりと明奈と向き合う。しかし、戦意は無く、両手をポケットにしまったままだった。


「…お前は動揺すると、相変わらず口数が多くなるな」


「…!!!」


明人の顔が歪む。その表情の真意が読めない。


その事に夢中になっていた明奈の後ろに、陰が静かに現れる。


「!!」


明奈がその気配に振り向いた時には、大きな鎌が振り下ろされた。


「くっ!!」


明奈は瞬時に地を蹴る。同時に蹴った脚からは焔の波動が揺らめいた。


「“火”をブースターとして利用したのか…流石だな、明奈」


鎌が消え、死神の様な“陰”が明人の側に立つ。


「…それがアナタの能力?」


明奈はもう一つ、扇を構える。そして明人は陰から薙刀を作り出した。


「そうだよ。さぁ明奈…いや、春日家現当主殿。殺し合いを楽しもうじゃないか」
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