今宵、月の照らす街で
明奈対明人。


言い換えれば、一対二の構図が描かれる。


先程、明奈が言った、明人との組手での戦績に偽りは無い。


明奈は明人に負けた事が無い。例え明人が薙刀を手にしても、文字通り負けた事が無かった。


だが、それは一対一での闘いに於ける話。


流石に元当主の姿をした者と、その“陰”を相手に対等に渡り合うことは、いくら明奈と言えども難しい。


明奈の中で不安要素が次々と頭に過ぎる。それでも、一番の不安要素は…明人の姿の真意。


「仮に…アナタが本当に兄さんなら…」


意を決した明奈が沈黙を破る。その瞬間、明奈が姿を消した。


一気に明人の背後を取って、明奈は扇に貯めた気を解放する。


「風月林[フウゲツリン]!!」


それは刃にも似た風を纏い、振り向きかけた明人の背を深く斬り付けた。
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