今宵、月の照らす街で
「目的…だと?」


梅宮がそう言って、空を見上げた。


「室長殿。貴女のその耳に展開した部隊から、そろそろ連絡があるんじゃないのか?」


言葉が終わった瞬間、夜空よりも更に深い暗闇が、天に昇る。


「な…!」


『室長!特異点が発生!この庁舎、九段下、市ヶ谷、秋葉原、有楽町に出現した柱を結び、五芒星を描いています!』


あずさからの報告。彼女の声からは、焦りと混乱を感じる。


「全員退避させて!」


『了解!』


多香子は、一連のやりとりを楽しみながら見ていた梅宮を睨んだ。


「これが目的?」


「政都機能を完全にダウンさせ、結界で一般人の関東圏からの出入りを防ぐ。これは第一段階さ」


「イチイチ卑劣なやり方ね」


「ほざけ。何も出来ない癖に」


梅宮が仕掛けてくる。


多香子の持つ菊一文字の刃渡りは2mにも達する。その刀の扱いは並の者では無いが、多香子はそれをいともたやすく操る。


しかし、唯一の弱点は接近戦だった。


梅宮は多香子の剣舞をくぐり抜け、懐へと潜り込む。


多香子にとっては、素手で闘う梅宮は天敵だった。
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