今宵、月の照らす街で
「くっ!」


多香子は完全に守勢だった。梅宮の早いラッシュを上手く避けながら、防ぐ。


だが、如何に防いだ所で、攻勢に廻らない限り意味が無い。


多香子自身、それを重々理解していた。


多香子の固い防御を崩そうと、梅宮は拳に力を込め、ワンテンポだけ攻撃のタイミングを遅らせた。


「そこッ!!」


多香子は一瞬の隙を見逃さなかった。左手の菊一文字を目一杯薙ぎ払う。


「嵐月時雨!!」


無数の風の刃が生まれ、加えて、菊一文字自体の重い剣撃が梅宮を捉えた。


「何っ!?」


多香子はそのまま刀を担いで梅宮を追撃する。


嵐月時雨で吹き飛ばされる梅宮に追いつくと、そのまま刀を振り下ろす。


「蒼刀一閃[ソウトウイッセン]」


「ぐあっ!!?」


梅宮は庁舎の駐車場に並ぶ車に突っ込む。その激しい撃突のせいで、車が2台、爆音を上げて炎上した。


多香子は燃え盛る炎から目を離さずに、菊一文字を構えた。


「嵐蒼絶空[ランソウゼックウ]」


多香子が容赦無く刀を振り下ろし、追撃に追撃を重ねる。


「な…に………!」


廃車と化した車から、更に面影が消え行く。炙り出された様に宙に浮いた梅宮は、車の破片が飛び散る地面に叩き付けられた。


「容赦ない…な…」


「御生憎様、敵と見做した者に情が出る程、寛大じゃないのよ」
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