今宵、月の照らす街で
「あずさちゃん?今から対策室に戻るね。誰かロビーに人を寄越して?」


「了解しました。手配します。現在内閣と長官、そして陛下が会議をなさってますが、室長が戻られる事を報告しましょうか?」


「ありがとう、お願いね」


トランシーバーでの交信を終えた多香子は、小さく溜息をついた。


『容赦無いな』


その言葉を思い出し、多香子は少しムっとなる。


「望んでなんかやってないもん」


気絶した梅宮に吐き捨てて、多香子は夜空を更に塗り潰した、空に伸びた陰の柱を見た。


「紘子…成二…みんな…」


家族と仲間の安否が気になる。そんな中、多香子は青ざめながら一つの事に気付いた。


「あずさちゃん?月宮葉月の現在地はわかるかな?」


少し焦りながらトランシーバーに話す多香子。


「はい、現在は千鶴さんと共に動いています。場所は秋葉原です」


「千鶴に月宮葉月の拘束の指示を送って。ロビーで暴れたのが梅宮カオルだったから、万が一が有り得るわ」


願うなら、シロであって欲しい。だが、室長としてすべき事は危険因子排除を考慮する事。だからこそ、葉月を捕らえる必要があった。


もしも京都からの使者が二人共クロならば、京都が危ない。


多香子は息を呑んで、廉明達と通信が繋がる対策室を見上げた。
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