今宵、月の照らす街で
「祓うって…多香子!あれは葉月の身体でしょ!?」


明奈が涙ながら止める。


「…千鶴。皆を連れてココから離れて。その後の指揮権は渡すね」


明奈の言葉をスルーして、多香子は千鶴に声をかけた。


「…了解。さ、みんな。離れるよ」


「千鶴!!」


明奈が千鶴の腕を掴んだ。その手には直接、千鶴の震えが伝わる。


「…みんな。離れるよ」


千鶴は地面を蹴った。後に続いて、桜と結衣が。そして、成二を抱えた京介も続く。明奈も涙ながらに、それに続いた。


「姉さん!」


最後に残った紘子の声が響く。振り向いた多香子に、妹は優しい笑顔を浮かべた。


「後でね」


「うん」


さりげない一言に、多香子は救われたような気がした。


そして紘子は、この場を離れたメンバーの後を追って行く。


『現当主が残るとは。月那主宮の“空”の気。そして“陰”の終局、“魔”の力を宿した鎧。これを身につけた葉月の身体ならば、貴様と云えども勝てぬよ』


葉月の身体が、一歩一歩と多香子に近付く。


「ふふふ…」


『…何が可笑しい?』


「いや…今までどんな敵も同じ事を言って、私の前で倒れていったから」


『我を…見下してるのか』


声に、怒りが篭る。多香子は構わずに、自らの身体に宿る力を解き放った。


「小龍沢家第157代当主小龍沢多香子“流閃”。参る」
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