今宵、月の照らす街で
鏨の力の特性、“貫通”。


京介の力は、同時に一撃を繰り出した千鶴の力に影響を与えた。氷壁を越え、魔を喰らう、千鶴の放った龍が大気を震わせる咆哮をあげる。


貫通力と破壊力が加わった龍が暴れ狂う中、4つ影が颯爽と氷壁を駆け上がった。


一つ目の影…桜は、空から5枚の符を地へと投げつける。その5枚が互いに線を結び、円を成し、円の中には五芒星が浮かぶ。


その陣の中に、2つ目と3つ目の影…紘子と成二が降り立った。その手にそれぞれあるのは、チャクラムと大剣。


その着地点を狙う魔が、牙を向けて襲い掛かる。


「ストップ」


最後の影、明奈が陣の前に着地する。その顔は余裕に満ちていて、右目から軽いウィンクが飛んだ。その瞬間、小さな風が生まれる。


明奈が起こした風は、全くと言っていい程に威圧感も無く、ただ、優しく流れている程。


明奈は口角を上げて、再び空へと跳び上がった。それを合図に、背を向けあった姉弟が、互いの武器を大きく横へと薙ぎ払う。


「「合式・陣風[ゴウシキ・ジンプウ]」」


それは、明奈の風を種火に烈しく音を唸らせ、天へと伸びる一筋の竜巻へと姿を変えた。
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