今宵、月の照らす街で
京都市内上京区に位置する家に帰るのが、まさかこの闘いの最中だと、成二は微塵も考えていなかった。


「姉さんは2階の部屋に運んで?負傷者はリビングに集めて頂戴。杏里さん?手当てお願いします」


「うん。じゃあ救急セット有りったけ持ってきてくれる?」


紘子は忙しく指示を出し、杏里は的確に治療をしている。杏里を除く八龍は必然的にダイニングテーブルに集まり、今後の計画を練っていた。


「問題は」


腕を組んでいた千鶴が口を開く。


「この家が攻められる前に多香子が回復するかどうか、ね」


「負傷者もそれなりの数だ。このまま連れて行っても足手まといだろ」


「口が悪いわよ、京介?」


明奈の指摘に、京介が頭を下げる。


「ま、的は得てるわね。千鶴?どうするの?」


「…負傷者は待機。後は多少防衛線を展開敷くつもり。いかが?」


千鶴の案に、全員が頷いた。


「ただ、ここまで来た彼らを軽く見る事は出来ない。八龍を半分残すわ」


「話が決まれば簡単だ。月那主宮を潰しに行こうぜ」


京介が席を外し、玄関へと脚を運ぼうと動いた。


「待って。京介には待機してもらう。桜、結衣、剣一郎、杏里。あなた達もね」
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