今宵、月の照らす街で
多香子は手を伸ばし、嵐紋菊一文字・真打を呼び出す。そして、その先に辺り構わず殺気を放つ男が立っていた。


「ヒ…………ヒャヒャヒャヒャ!!」


首をグリっと傾け、焦点の合わない目が多香子に纏わり付く。


「アナタ…一体…?」


「ゼータ」


それは、おそらく彼の名だったのだろう。ゼータはそのまま再び宙を舞い、多香子に襲い掛かる。


「首をくれぇぇ!!!」


奇声を発しながら、陰の波動を爆発させ、握った刃を振るう。


「哀れ、闘いしか知らないのね」


多香子が呟く。そして多香子もまた、嵐の波動を爆発させるように発した。


そしてゼータの刃が多香子を捕らえる瞬間、多香子も刀を薙ぎ払った。


「…あ…あれ………」


ゼータが着地と一緒に、自らに違和感を覚えた。その身体を見ると、身体に蒼い一線が刻まれている。


「ま…まさか…」


ゼータが多香子を見ると、彼女は背中を向けていた。


「俺………消え………る………の……か………?」


ゼータの身体が崩壊していく中、多香子は皇居の方向を見据えていた。


「私達の力は支配する為のモノじゃないのに………!」


多香子は京介に視線を投げた。


「ここ、頼むね?」


「了解」


京介の返事に、多香子は微笑んで、闇の中へ駆け出した。
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