今宵、月の照らす街で
シュボッと、静かに火が点る。


くわえた煙草を口から離し、空に紫煙を吐き出した。


「爺さん、ウチに来いよ」


「…何?」


違いに血にまみれながら、唐突に言葉が交わされる。


「勿体ねぇよ。その力を人の為に使わねぇか?」


「…主を裏切れ、と?」


「…まぁ、そうだな」


京介の唐突さに、オメガが思わず噴き出した。


「は…はははは!貴様、何、戯言を!」


そのリアクションに、京介が溜息を吐いた。その笑いの意味を察したのだろう。


「残念。ダメか」


「うむ、残念よの」


それ以上、言葉は無かった。


「だが、敵ながら我を評価してくれた事には感謝する」


「そんなん何の得になんねぇよ」


京介が静かに拳を構える。


「そんじゃ続き、やろーぜ」


オメガが京介の闘気に当てられ、身震いをする。そして、京介に応えるように拳を突き出した。


「腕、減らすのか?」


京介が言った腕とは、オメガが力を解放した時の、6本の腕の事。今のオメガに、それは見られなかった。


「分散より、集中。それが一番強い」


「違いねぇ…!」


会話を終えた二人が、一気に力をマックスまで上げる。二人は口角を上げ、闘いの絶頂の中、拳と拳をぶつけ合った。
< 285 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop