今宵、月の照らす街で
「“嵐”の…波動の特性………知ってるか?」


肩で息をしながら、成二が微笑む。


紘子を庇う為に波動を出し尽くし、もう成二の手からは大きな波動は出せなかった。


それでも成二はマウントポジションから左手を天に伸ばし、無理矢理に気を練り出した。


「嵐の特性は“破壊”。アンタの同化よりも早く喰らわせてやらぁ」


『ナ…………ッ!』


廉明が何かを言う前に、先程の成二の剣撃と同じ位置に拳がぶつかった。


成二の全身全霊を掛けた嵐の波動が、甲冑を貫く。廉明は言葉を吐かずに、成二に頭を捕まれたまま立ち上がり、間合いを取ろうとした。


『邪魔ダ!』


廉明は自らの腹部を露呈しながら、無数の槍で貫かれている成二に追い打ちを掛け、0距離から正拳突きを放った。


成二が耐えられずに離れ、後ろへ飛ぶ。


その影から、多香子と紘子が姿を見せた。


『!!!』


「「チェックメイト!!」」


多香子の右手には、8匹の龍が、紘子の左手には、轟音を掻き鳴らす嵐が宿っていた。


それが、成二の穿った甲冑の腹部を確実に捉えた。
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