今宵、月の照らす街で
廉明の体内で“嵐”と“銀”の波動が共鳴し、陰と反発する。


低い声で唸る廉明の姿を前に、紘子は成二を水の気で優しく包み込んだ。


『力が…消えていク……』


甲冑は剥がれ、廉明は力無く崩れ落ちた。多香子達を苦しめた攻略困難だったそれは、霧の様に風に流され消えていく。そして廉明もまた、肉体が消えかかっていた。


「おじ様…」


多香子の瞳に、後悔の色が浮かぶ。


『私ヲそう呼ぶノか。貴様を殺そウとした男ダぞ』


廉明が笑う。多香子は何も言う事が出来なかった。


『力ヲ求める事ガ出来ルと言う立場ハ不幸なものダ。生まれルなラ、二度と神の血を継グ一族ニ等生まレたくないな』


廉明の右半身は既に消えかかっていた。目の前に居る、かつての上司であり叔父である敵の姿に、多香子の心境は複雑に感情が絡み合う。


「力は求めるものだけど、支配とは違う。少なくとも、私達が力を持ち続けるのは、人を守る為だからだと思います」


多香子の言葉に、廉明が笑った。


『ならば証明してみせよ。貴様のその言葉を吐き違える事なく一生貫き通してみせよ。それが叶わぬ時、貴様を殺しに蘇ってくれるわ』


そう言い残し、廉明は闇の中へ消えていった。
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