今宵、月の照らす街で
皇居、碧紋院[ヘキモンイン]の間。


天玉院の間が修復中の為、今は天皇との謁見は、この広間で行われていた。


「フォルセティ・アナンベルは、先代小龍沢の死と関連が深いと思われ、このまま拘留を続けるべきと考えますが、セラ=シグマ・ローゼンガルドは月那主宮に操られていた西洋術師です。処分というより、対策室への加入を許可頂きたく存じます」


結衣と杏里が、蓮舞天照院時宮にそう説明すると、時宮は暫く黙り込む。


「ローゼンガルド家は確か、如月家がフランスに出向いた際に力になった家系ですね、桜」


杏里の隣に立つ桜は、緊張しながら小さな声で返事する。


「ローゼンガルド家の長女が数年前に失踪したのは耳に届いてます。もちろん、名前も一致しています…わかりました。まずはフランス政府に確認を取ってみましょう。加入の話はその後です」


時宮はそう言って、隣に立つ側近に指示を出す。そして、優しい顔で耳打ちをした。


「今回、みな、大いに活躍してくれた。ささやかではあるが、私も誠意を以て要望に応えましょう」
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