今宵、月の照らす街で
清明館学園は今、冬の球技大会で盛り上がっている。


たかだか球技大会と思うなかれ。


バスケ・バレー・テニス・サッカー・ソフトボール各種で順位ごとにポイントがあり、総合優勝クラスには焼肉屋のタダ券。


理事長の同級生の焼肉屋オーナーがスポンサーとかなんとか。


まぁそんなこんなで全校生の瞳に「肉」一文字を宿すこの日は絶好のサボり日な訳で。


道場でごろごろし続け、もう12時。通りで腹が減る訳だ。


途端に携帯がメール受信を告げる為に震え出す。


メールを開くと、送り主の名前はソフィと表示されていた。


--どこですか--


日本の女子高生らしかぬ無機質な文面に、彼女が異国人である事を感じる。


--道場。ゴロゴロしてる。--


俺も人の事を言えない様な文面で返信をする。


返信完了の表示と共に、道場の玄関が開く音がする。


「サムライはやっぱりこういう所が好きなんだね」


謎な持論を突き付けながら、ジャージ姿のソフィが入ってくる。


「サムライは関係ない」


一応、誤解は解いておこう。


「じゃあ陰陽師?」


声を潜めてソフィは悪戯な笑みを浮かべた。
< 61 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop