今宵、月の照らす街で
霞ヶ関、政都宮内庁内18階。


たった一人、対策室で書類作成に追われる中、顔を画面から上げると、救護班の2人が入って来た。


「あれ室長、大学は?」


和弥が驚いた顔をする。


「休講なの」


そう言うと、はるかは画面を覗きに近付いてくる。


「本部に送る書類、ですか?」


「まぁねー」


多香子が背伸びしながら横目にはるかを見ると、書類にあからさまな嫌悪感を醸し出していた。


「そーいえば…成二は?」


和弥がへらっとした顔で尋ねてくる。


「明奈さんが面倒見てるの」


「明奈さんが?」


和弥の反応の早いこと早いこと。


「珍しいですね。あの人が他人の面倒を見るなんて…それに室長も、よく許可しましたね」


「まぁねぇ…」


―――やっぱり。


彼女は誤解されるタイプだ。


過去の過ちからか、ココに転属してから誰とも触れ合おうとしない人だった。


―――でも…本当は…


多香子はふと、少し雲のある、窓越しの空に眼を移した。
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